不動産の法律入門「自然災害における貸主責任について」
- あるマンション入居者から貸主(オーナー)に対する損害賠償の要求です。
先日の台風の時に貸室の設備であるネット回線が一時的に使用できない状態に陥り、「外為取引」ができず損害が発生した。賠償してほしいとのこと -
家主としてどこまで責任を負うことになるのか
大変残念なことではございますが、九州の北部を中心とした「熊本地震」が発生し、死者60名以上、負傷者1,600人以上、避難者15,000人以上、建物損壊64,000棟以上と多くの人々が今でも厳しい被災生活に苦しんでいる訳で、一日も早く穏やかな生活に戻れることを今はただ祈るばかりです。まさに今は地球規模でマントル対流の活動期なのでしょうか。
我々日本人にとって「日本列島=地震列島」に生まれ生活を営む上で逃れることのできない宿命である地震との関係を、今後増々研究を進め、事前警報の精度を高めたり、建築物の耐震・制震・免震化の推進をさらに早期に押し進めていくことが求められているところなのです。
また地震以外の自然災害につきましても、近年は地球の温暖化が原因なのか、台風の大型化や発生の数の激増、そして突風・竜巻・ゲリラ豪雨等々、昔に比べると全てがその威力を増しているのが現実です。
その様な中で、「賃貸住宅における家主としての責任」についてはどのようになるのでしょうか、考えてみることに致しましょう。本来民法の原則によれば、賃貸人が賃借人に対し、賃貸目的物件を使用収益させることを約し、賃借人がその対価として賃料を支払うことを約する契約であることから、賃貸人はその建物の使用収益に支障が生じた時には、これを修繕する義務がある訳です(民法第606条1項)。しかし、どのような場合にどの範囲まで修繕義務を負うかについては、法律に明確な規定はないのが現状なのです。なぜならば、この条項は「任意規定」だからなのです。